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2004.11.06

鈴木宗男氏の有罪判決をどう受け取るべきか?

 11月5日、東京地方裁判所(八木正一裁判長)は、受託収賄、あっせん収賄など4つの公訴事実で起訴されていた前衆院議員の鈴木宗男氏に対して、懲役2年・追徴金1100万円(求刑懲役4年・追徴金1100万円)の実刑判決を言い渡した(asahi comの記事)。

 鈴木氏は、この判決に不服があるとして即日控訴している。これに対して、東京地検の笠間治雄次席検事は「量刑にやや不満があるので対応を慎重に検討したい」とのコメントを発表している。

 鈴木氏は、当初から、起訴事実を全面的に争って無罪を主張していたが、東京地裁判決は、ほとんど全面的に検察官の主張を容れて、無罪主張を退けた。鈴木氏自身が、次のようにコメントを出している(鈴木宗男氏のホームページ)。

 本日の東京地方裁判所の判決は、私を有罪だとする検察官の主張に沿った証言や供述をした者の証言ないし供述を信用できるとして、これを採用し、検察官の主張に沿った事実認定をして私を有罪としました。一方で、真実を話した私の供述や、私の主張を基礎づける証言をした佐藤玲子氏や他の証人の証言については、信用できないと判断しました。しかも、私が、やまりん事件の実態等を反証するために、複数の証人の採用を求めたにもかかわらず、裁判所はいずれの証人も採用せずに、検察官の主張どおりの認定をしました。私は、このような方法で私を有罪であると認定した裁判所の手続きに承服することはできませんし、私に対する有罪判決に対しても到底納得できるものではありません。

 マスコミ報道を見る限りでは、東京地裁の有罪・実刑判決は概ね肯定的に受け入れられているように見える。
 しかしながら、鈴木氏に対する東京地検特捜部の捜査のあり方については、「国策捜査」であるとして強く批判されていた。

 たとえば、ジャーナリストの魚住昭氏は、次のように述べていた(朝日新聞2002年9月16日)。なお、国策捜査については、同氏の『検察捜査の闇』(文藝春秋、現在は文庫化されている)に詳しい。

 実は、ここ数年の検察捜査には事件の真実を探求するより、あらかじめ狙い定めた対象の摘発を優先させる「国策捜査」の傾向が目立っている。その始まりが住専事件だ。(省略)逮捕されたのは破綻原因をつくったバブル時代の経営者ではなく、その尻拭いをした後任者たちである。(省略)政治不信の責任を一身に引き受けた感のある鈴木氏の逮捕も同じ文脈の中にある。
   また、政治学者である山口二郎氏は、次のように述べている(山口二郎オフィシャルホームページ「鈴木宗男事件、もう一人の主犯」)。
やまりんは鈴木氏と密接な関係にある会社であり、国有林無断伐採事件が起こったとき地元では鈴木氏の関与が噂されていた。贈賄側が時効になった今頃になって立件するというのは、検察の怠慢ということもできる。加藤紘一氏の脱税については立件せず、鈴木氏を逮捕するというのでは、検察による起訴裁量の行使があまりにも不公平ではないかとの疑念が残る。政治家の違法行為に対して検察が公平に法の処断を下しているかどうか、常に監視しなければならない。
 東京地検特捜部は、収賄事件について、贈賄側が時効(公訴時効)にかかって訴追され有罪にされる可能性がなくなっているにもかかわらず、収賄したとされる鈴木氏側を立件した。そして、東京地裁は、その贈賄側の供述等の証拠で、鈴木氏を有罪にしたのである。

 具体的には、東京地裁は、収賄事件について、贈賄側の関係者らの供述や証言で有罪認定しているようである。

 この種の事件において、東京地検特捜部は、捜査段階において、贈賄側の関係者に対して厳しい取調べを行って、検察に都合の良い供述調書を作成(作文)し、署名押印を迫ったことは容易に想像できる。

 そして、東京地検特捜部は、そのような供述調書さえとれれば、仮にその関係者が、刑事裁判の法廷で、「検事さんの厳しい取り調べで、自分がしゃべってもないことが供述調書になっている」と証言しても、「相反供述」であるとして、捜査段階の供述調書が弾劾証拠として提出することができる。
 裁判所はそれを採用して、ほとんどの場合に、捜査段階で作成された供述調書の方が法廷供述よりも信用できると判断するのが普通である。

 今回の東京地裁判決の内容を見ていないので、そそこまでは踏み込まず、法廷での供述が信用できるとして有罪判決を書いているかもしれない。ただ、被告人にとっては、大変に厳しい裁判展開だったと思われる。

 マスコミや世間は、今回の東京地裁判決が出たことが、「一件落着」と受け取って、この事件はどんどん風化していくのだろう。その結果、東京地検特捜部が行った「国策捜査」という批判も忘れ去れていくのかもしれない。しかし、果たして、それで良いのだろうか。

 ところで、東京地裁は、量刑の事情として、「捜査、公判を通じて不合理な弁解に終始し、反省の情も皆無というほかない」などと述べて、鈴木氏を実刑にしている。
 以前から、否認して争う被告人に対して厳しい判決が出されてきたが、今回の判決は、元政治家であっても、その点を普通の市民と区別しないで、否認して争う者に対しては情け容赦なく厳罰をもって望むという裁判所の強い意向の現れであると考えられる。

 いずれにしても、鈴木氏が控訴したことによって、この事件の舞台は東京高裁に移ることになった。東京高裁で公判が開かれるようになるのは相当先になるだろう(控訴事件では、控訴した側が控訴趣意書を提出するまで数ヶ月から半年、1年を要することが普通である)。私たちは、もう一度、東京地検特捜部の「国策捜査」のあり方を批判し続け、鈴木氏の事件の動向についても注視していきたい。

【Today's Back Music】
 稲垣潤一Revival II (TECI-1077)
  洋楽・邦楽のカバーアルバム。シャープなサウンドと洋楽にも日本語詞を付けて歌っている点に特徴がある。

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Comments

1995年のオウム真理教事件で、治安維持のためなら捜査機関は少々無茶をしても許されるという風潮が出来上がったことが大きいと思います。

Posted by: Piichan | 2004.11.23 at 06:33 PM

>Piichanさん
同感です。治安のためには手段を問わない(と言うのは言いすぎですが)と世論が認めたからですね(私もあの時は緊急避難的で止むを得なかったという認識しかありません)。
今年は災害も多く、消防・海上保安・自衛隊といった捜査機関でも救助部門の活躍がクローズアップされ、強化せよという世論が出来つつあります(評価できる点もありますが)。
アメリカでも9.11以降そういう状況になってカナダ・イギリス・オーストラリアなどに切り替える人が多いようです。
それに「被害者の人権はどうした」と加害者の人権は軽視しても構わないという風に誘導されたのも大きいですね。
その点で自民党の憲法改正草案は評価できます。

Posted by: ボンド13 | 2004.11.24 at 01:21 PM

pichanさん、ボンド13さん
 コメントありがとうございました。基本的には同感です。

 ところで、ボンド13さんの最後の
>その点で自民党の憲法改正草案は評価できます。
という点が少し引っかかったのですが、この点をもう少しご説明していただければ幸いです。

Posted by: ビートニクス | 2004.11.25 at 11:30 PM

贈賄側の証言から収賄側を逮捕する。
作文させられる。
父が収賄側で同じ方法で逮捕されています。
警察のひどいやり方には、逮捕までの長い期間を含めて、承知していましたが。
常套手段だとは知りませんでした。
鈴木宗雄さんのように既に、判例が有る事見ると、
対処方法は無いのですね。
生活が成り立たず、
憤りのやり場がありません。。。

Posted by: だんの | 2008.06.17 at 09:11 AM

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