いよいよ共謀罪の審議入りが迫っている
共謀罪の新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」が、衆議院法務委員会において審議入り間近という緊迫した状況となっている。
このブログでも、「共謀罪を成立させて良いか?」と題して、批判的に論じたことがある。
私は、現在、共謀罪は、1999年8月に成立し、翌2000年に施行された、いわゆる盗聴法(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律)に続く悪法であると考えている。
J憲法さんが、「共謀罪について(資料)」として、共謀罪に関する資料をまとめて掲載してくれており、大変に参考になる。
この法律の問題点について、法律の専門家でもない人にもわかりやすく説明した「共謀罪とは何か」が収録された斎藤貴男・沢田竜夫編著『「治安国家」拒否宣言-共謀罪がやってくる』(晶文社、1700円+税)が発売された。是非、関心がある方に読んでいただきたい。
また、少し前に、足立昌勝監修『共謀罪と治安管理社会-つながる心に手錠はかけられない』(社会評論社、1800円+税)も発売されており、私も、「進む警察国家化」を寄稿している。こちらも、関心がある方に是非お読みいただきたい。
共謀罪というのは、一言で言えば、人と人とのコミュニケーションに国家が介入することを認める法律である。その点で盗聴法に通ずるものがある。ただ、盗聴法が単なる捜査手段であったのとは異なり、共謀罪は、人と人とのコミュニケーションそのものを「犯罪」として処罰することを可能にするという点で大きく異なっている。
つまり、共謀罪は、「思想」の処罰に一歩踏み込む立法であるというである。
ところで、本年4月20日の参議院本会議において、民主党の簗瀬進議員に対する質疑において、南野法務大臣は、次のように答弁している。
犯罪の国際化等に対処するための刑法等改正案は、近年の犯罪情勢にかんがみ、国際的、組織的な犯罪やハイテク犯罪に適切に対処するための法案であり、我が国の治安の回復のみならず、国際協調の観点からも極めて重要な意義を有しております。この法案が定める共謀罪は、特定の組織的な犯罪を実行しようとする具体的、現実的な合意をする行為を処罰するものであり、人の内心や思想を処罰するものではありませんが、御指摘の点も含め、十分に御審議いただきたいと思っております。
確かに、共謀罪は、人の内心や思想を、直接に処罰するものではないが(そのような法律を作ることは絶対に許されない)、人と人とのコミュニケーションそれ自体を処罰することによって、間接的に、人の内心や思想を処罰することになるのである。
その点に全く思いを致さないのか、分かっていて知らんふりをしているのか、共謀罪を含む刑法等の改正案について、政府・与党は、今通常国会において必ず成立させようとする勢いである。
今通常国会は既に延長が決まっているが、国会では、郵政「改革」法案の対応も含めて波乱含みであり、衆議院法務委員会においても、まだ、共謀罪等の刑法等改正案の審議には入っていない。しかし、今通常国会での成立を決めている政府・与党としては、早ければ今週中の審議入りを目論んでいるようである。
残念ながら、世論の盛り上がりにはまだまだ欠けているし、マスコミもこの法案の問題点をほとんど取り上げていない。
しかし、共謀罪が成立した後の日本は、確実に息苦しい世の中になるだろう。自分が他人と交わした会話が、後で「犯罪」として立件されるかもしれないのである。
やはり、共謀罪の新設に対しては、絶対に反対するしかない。また、多少の修正でお茶を濁すことも許してはならない。
共謀罪の新設は、日本の戦後の自由主義や民主主義ということの価値や意味に対して、根本的な問いかけをしているように思われる。
その意味で、この動きを知らずにやり過ごすのか、真っ向から向き合うのかという私たちの姿勢が問われている。
【Today's Back Music】
エディ・ヒギンズ・トリオ & スコット・ハミルトン/マイ・ファニー・バレンタイン(TKCV-35348)
エディ・ヒギンズ(p)とスコット・ハミルトン(sax)の競演によるスタンダード中心の演奏。ゆったりとして、渋い演奏に心が和まされる。
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Comments
こんにちは、
刑法関係のことはまったくわからないのですが(さいわいなことに)、適用を考えている犯罪の種類が「量刑の重さによる基準」というのは大いに疑問があります。もっとも犯行以前の行為に対する適用というのも問題はあるように感じます。
普通の犯罪は、犯行を起こした段階から犯罪であって(殺人なども)、犯行を準備、計画した段階から有罪と言うのは、限られた範囲と思いますので、それ以外に適用するのは、そもそもおかしいと思います。
なにか、鹿ケ谷の密談とか池田屋騒動みたいな時代錯誤的法律ではないでしょうか。
Posted by: おおた葉一郎 | 2005.07.06 at 09:56 AM
おおた葉一郎さん
コメントありがとうございました。確かに、時代錯誤的なものではあります。
基本的には、「犯罪」を予防して安全な世の中を作ろうというのが政府の一応の建前だと思います。しかし、それを突き詰めれば、危険な人物を日常的に監視し、怪しげな人との接触があれば、それを「共謀」と疑うということに繋がると思います。まさに、「人を見たら犯罪者と思え」ということになってしまう訳で、人間不信が極まることは間違いないと思います。
Posted by: ビートニクス | 2005.07.07 at 04:49 PM
お久しぶりです。
今回からボンド13改めこのハンドルネームで書かせていただきます。
共謀罪ですが、戦前の治安維持法、治安警察法、行政執行法を思い出しました。北朝鮮や中国、サダムフセイン時代のイラクと同レベルに過ぎません。こういう国家が偉そうに非難できるのでしょうか。韓国や台湾ではこういう法令は廃止されたと聞いています(間違っていたらご容赦ください)。
進めるならば国や自治体、大企業などの社会的に影響力の大きい組織にこそ厳しく適用するのが先決です。
Posted by: ゴルゴ十三 | 2005.07.17 at 10:38 PM
ゴルゴ十三さん
お久しぶりです。コメントありがとうございました。
漫画の「ゴルゴ13」は愛読しています。
共謀罪は確かに、戦前の治安維持法などに通じるものがあることは確かです。韓国では、国家保安法は廃止されたと思います。日本は明らかに逆行しています。ただ、これは、アメリカやイギリスなどの「反テロ」という名目でやってきている所が目新しいと言えるでしょう。いずれにしても、こうような法案が提案されること自体、時代がきな臭いものになりつつあることを示していると思います。
そして、共謀罪が、政党や、大企業、特に最近の橋梁工事をめぐる談合などの共謀に適用されるのかに注目しなければならないでしょう。そういう方向に適用される可能性はほとんどないとは思います。ただ、今回の談合事件についても、背景には郵政問題があったとも言われており、政治的な検挙であった可能性もありますので、そのように場合に、共謀罪は便利に使われる危険性があると思います。
Posted by: ビートニクス | 2005.07.19 at 04:31 PM