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2005.10.21

共謀罪の今特別国会での成立はなくなったが・・・

 共謀罪法案について、自民・公明両党は、10月19日の幹事長と国会対策委員長の会談において、犯罪の事前相談に加わっただけで罪となる「共謀罪」の創設を柱とする組織犯罪処罰法などの改正案について、民主党との協議が難航していることなどを理由に、今国会での成立を断念し、衆議院で継続審議とすることで合意したと報道されている(読売新聞の記事)。

 与党は、あくまでも継続審議として、来年の通常国会での成立を期すとしているのであるから、採決が先延ばしたされただけだということに注意しなければならない。つまり、共謀罪法案が廃案になるわけでも、与党がこの法案の成立をあきらめた訳でもない。

 それにしても、11月1日までの極めて短い会期であり、しかも、通常は首班指名を行うだけの特別国会に、国民からの反対が大きい治安立法を提案し、それが可決できると判断していた政府・与党の責任は極めて重いと言わなければならない。また、何の修正もしないで提案した法務省にも責任があると言わなければならない。

 ところで、10月14日には、衆議院法務委員会で実質審議入りし、与党議員からの質疑が行われた。自民党の平沢勝栄議員は、、「犯罪は未然に防がなければ意味がない」「共謀罪は国際的に常識」などと述べて、共謀罪法案の正当性を前提した質問を行ったが、自民党の柴山昌彦議員、稲田朋美議員、早川忠孝議員、公明党の漆原良夫議員は、それぞれ、政府原案に疑問を示しながら質問を行った。

 特に、公明党の漆原議員の質疑の中のやりとりで、大林政府委員(法務省の大林刑事局長)の回答の中に気になる次のような答弁がある。

「団体とは共同の目的を有する多数人の継続的結合体ですので、そのような共同の目的を有する団体として犯罪行為を行うことを意思決定したと考えるためには、犯罪行為を行うことが団体の共同の目的に沿うものでなければならない。すなわち、共同の目的と相いれない場合には、『団体の活動として』という要件を満たさないと解しているところでございます。したがいまして、正当な目的を持って活動している団体につきましては、仮にたまたま団体の幹部以下が組織により行われる具体的な犯罪を共謀したとしても、犯罪行為を行うことがその団体の共同の目的と相いれない場合には、『団体の活動として』という要件を満たさない、このように考えております。」

 ところが、大林政府委員は、団体の共同の目的については変化がありうることを認めている。

「団体の共同の目的とは、必ずしも、設立登記や定款に記載されている目的や、団体が形成された当初の目的のみをいうものではなく、当該共謀が行われた時点における個別具体的な団体の活動実態に照らして判断されることになります。したがって・・・当初の目的が失われ・・・犯罪集団化した場合には、共謀罪が成立し得ると考えられます。」

 大林政府委員が前半に述べている点は、団体の共同の目的から、「団体の活動」性を極めて限定する見解をとっているかのように述べており、普通の会社や労働組合や市民運動団体などについてはほとんど共謀罪が成立する場面がないかのように説明している。

 ところが、後半では、それを否定するように、団体の共同の目的は変化しうるので、共謀を行った時点での共同の目的によっては共謀罪が成立し得ると述べているのである。

 ここからすれば、共謀罪の対象する団体には、やはり、会社や労働組合や市民運動団体も入っているということになり、捜査機関によって、共同の目的が変化して組織犯罪集団化したと判断さえすれば、共謀罪が成立し得ることを正面から認めている。

 裏を返せば、この答弁は、「共同の目的」についての解釈論で、共謀罪の対象となる団体を制限することは極めて難しいことが明らかとなっている。また、政府答弁は、共謀罪法案が成立して実際に捜査機関が適用する現場や裁判所においてはほとんど何の拘束力もないことも銘記しておかなければならない。

 既に、与党内部で、共謀罪についての修正案をまとめたことが報じられているが(NIKKEI NETの記事)、そのうちの、「団体」性に関する修正は極めて困難であり、それがなされたことによって、共謀罪の危険性が減殺されるわけではないことに思いをいたさないといけない。

 10月14日の与党議員により質疑においても、共謀罪法案の危険性や問題点は繰り返して指摘されている。明日(10月21日)の午後には、野党議員による質疑が予定されている(社民党の保坂展人議員のブログ)。

 今回、民主党は、一旦、共謀罪を廃案にして、我が国の刑法原則と条約の本来趣旨に則った処罰規定を設けた抜本的見直し法案を出し直すべきだと主張している(民主党の衆議院法務委員会の筆頭理事である平岡秀夫議員の「今日の一言」)。この主張を貫いた結果、民主党を巻き込んで、修正の上で成立を画策していた与党は立ち往生せざるを得なくなった。もちろん、市民からの反対の声やマスコミによる批判的な報道など世論の力によるところも多い。

 また、表現活動に関わっている出版労連日本ペンクラブが共謀罪の成立に反対する声明を出したことも、大きな力となっている。

 北海道新聞の高田昌幸さんが、そのブログで指摘されるように、「共謀罪は(さらには人権擁護法案や憲法改正国民投票法案も)、「言葉」を規制・取締りの対象としているからこそ、問題なのだ。」
 人の言葉自体を取締りの対象とすることは言論弾圧につながるものだからである。共謀罪が本質的に危険なのはまさにその点なのである。
 その意味で、出版や言論に関わる人たちも、共謀罪の危険性を訴えるようになったことは、今後の反対運動にとって大きな原動力になることが期待される。

 私としては、共謀罪法案は修正して成立させれば良いというような法案ではなく、廃案とされるべき法案であると考えている。今特別国会においても、残された会期において、衆議院法務委員会におげる審議が続けられるので、その審議の様子を監視し続けたい。

【Today's Back Music】
EUGE GROOVE/JUST FEELS RIGHT
 サックス中心のサウンドですが、大変にクールで何度聴いても飽きない。インターネット・ラジオでも時々かかっており、今風のサウンドであることは確かでしょう。

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