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2006.01.24

東京地検特捜部による「劇場型」見せしめ逮捕は許されるか?

 ライブドアの関連会社が虚偽の企業買収情報を公表したなどとされる事件で、東京地検特捜部は、1月23日の夜、ライブドア社長ら4人を、証券取引法違反容疑で逮捕した(朝日新聞の記事)。

 1月16日の夕方から翌日朝まで、ライブドアや関連会社等に対して、大々的な家宅捜索を行ってから、わずか1週間しか経っておらず、1月23日も午後3時ころから、ライブドア社長に対する任意の事情聴取を初めてから4時間半程度で逮捕状を執行したようである。

 ライブドア社長は、昨日更新したブログ「社長日記」の記事で、事件を否認する立場を初めて明らかにしており、23日の任意の事情聴取に対しても、おそらく同様に被疑事実を否認したことから、即日逮捕されることになったものと思われる。

 それにしても、今回の逮捕劇は、「見せしめ」であり、「一罰百戒」という側面が極めて強い政治的な逮捕であったと考えられる。しかも、マスコミの多くの関心を集めて、マスコミを意識した絶妙なタイミングで逮捕しており、「劇場型犯罪」と対比すると、今回の逮捕劇は、国民に対して、東京地検特捜部の活躍を誇示するような「劇場型逮捕」だったと言えるだろう。

 1月23日発売の「週刊ポスト」(2/3号)は、ある社長による「新興市場にはライブドア以上にひどいマネーゲームを繰り返している会社がヤマほどある。ただホリエモンほどの知名度はない。だから一罰百戒の対象としてライブドアが狙われた」というコメントを紹介している(同30頁)。

 証券取引等監視委員会と東京地検特捜部は、まさに、「見せしめ」の対象として、ライブドアを選び、昨年から内偵捜査を着々と続けてきていたのであろう。

 これまでも、ライブドアは、「時間外取引」など、法律違反ではないかと指摘されながらも、明確に法律違反とは言えないグレーゾーンを利用してきたと言われてきた。
 株式分割についても、それ自体は違法ではなく、その前後における「風説の流布」や「偽計」との「合わせ技」で「違法」だというのが今回の捜査当局のとる見解のようである。

 法律上は、「法の不知は罰する」とされており、刑法38条3項本文は「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」と規定しているから、これまで、グレーゾーンだと言われてきたものを、後から、ブラック(違法)だとして摘発することは問題がないようにも見える。
 しかし、そのような「後出しジャンケン」のようなやり方で摘発し、それを有罪に持ち込もうとする捜査のやり方については、決してフェア(公正)ではなく、適正手続の保障(憲法31条)にも反するように考えられる。

 今回のライブドアに対する東京地検特捜部の捜査のやり方を見ていると、国家権力を使ってでも、株式市場において望ましくない者を排除して、その秩序を維持しようとする姿勢が色濃く反映していると思われる。

 確かに、倫理的には、「金が全て」だと言い切り、拝金主義を極端に推し進めるライブドアのような新興企業のあり方は、「旧体制」側の人間にとっては大変な脅威に感じただろう。
 しかしながら、そうだからと言って、それまで法律の解釈が曖昧であったり不備があるなどして、「グレーゾーン」だったものを、急にその解釈を変えて「ブラック(違法)」だとして、刑罰を適用して排除しようとするやり方は、極めて乱暴であり、まさに権力を剥き出しにした強権的なやり方と言わなければならない。

 市民の多くは、今回のライブドアに対する捜査については、「勧善懲悪」という観点から広く支持するのかもしれない。その背景には、圧倒的な「勝者」に対する妬みという側面もあるだろう。

 冷静であるべきマスコミは、「無罪の推定」の原則を忘れ、ライブドア社長らが逮捕された途端に、彼らを犯罪者扱いするような膨大な量の報道を行っている。
 彼らは視聴率が取れさえすれば何でも報道するという視聴率至上主義の立場に立って、少し前までは、ライブドア社長を娯楽番組に出演させていたにもかかわらず、今度は、手の平を返したように、ライブドア社長を叩くような報道を繰り返している。

 今回の東京地検特捜部による逮捕劇は、このような状況の中で、それを計算し尽くされた上で計画的に行われたものであると考えられるのであり、まさに、国民に対する「見せしめ」のための「劇場型逮捕」だったのである。これも一種の「国策捜査」と言って良いと思う。

 この逮捕を真正面から肯定することは、東京地検特捜部の権力行使を正当化させるだけである。彼らの捜査が常に正しく、適法な訳ではない。

 それは、刑事裁判の過程で、捜査過程を明らかにする証拠が提出され、それが公判の中で弾劾される中で、初めてチェックすることが可能なのである。

 したがって、それが可能になるずっと前の捜査段階で、東京地検特捜部の捜査のあり方を手放しで肯定することについては強い疑問がある。

 それを一旦認めてしまえば、東京地検特捜部が暴走することに対する歯止めがなくなることになる。まさに「国策捜査」を行って、時の権力に反対する政敵について、何らかの容疑をデッチ上げて牢獄にぶち込むことも容易にしてしまう恐れがある。

 ライブドア事件について、東京地検特捜部がここまで大々的に捜査を行っているのには、今回の逮捕容疑の先に、ライブドア本体についての粉飾決算の容疑は当然として、さらに、政治家などの繋がりまでも視野に入れているのかもしれない。

 ただ、その先の容疑の方を強く意識し、その立件をするために、16日の家宅捜索や今回の逮捕をしたのだとしたら、「別件捜索・差押え」や「別件逮捕」の疑いも出てくることになる。

 私は、ライブドア事件の捜査が進み、起訴されて有罪になるかどうかという点にはあまり関心はない。しかし、これまでに述べたように、私は今回の逮捕劇については強い違和感を感じている。それが単なる杞憂に終わることを願うだけである。

【Today's Back Music】
 /Beyond the Sea(SRCL-6219)
 22歳のソロボーカリストによる新譜。ソウルフルなボーカルであるが、自身のピアノやキーボードによるバラード曲に才能を感じる。

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Comments

わたしは「悪法も法」という人なので、証券取引法で違反があれば逮捕で良いと思うけど、扱いはヘンですよ。

そもそも特捜部が出てくる程のものか?と思うし、それ以前にそんな事件になるまで監督出来ない金融庁以下の監督機関や東証の責任はどうなのよ?と思います。

大体、ちょっと詳しい人はライブドアが立派な会社なんて思っている人は私の周辺には居なかった。

むしろ、もて囃したのはマスコミであり、今度も大したことでない事件を「大事件」にして一斉に社説と来ましたよ。

酔うぞの遠めがねに並べてしまいました。
あまりにひどくて「これは社説じゃないだろう」というのは半分といったところですね。

監督機関やフジテレビあたりが「いい幸い」で自分の責任を全部ホリエモンに押しつけて逃げる図になってきました。

Posted by: 酔うぞ | 2006.01.24 at 11:50 AM

今回の一件は、捜査・公判(起訴するはずですので)を見守りたいと思います。
報道が暴走しているのは同感です。
今まで持ち上げていたくせに検察(警察も)が「犯人」と認定すると手のひらを返したように断罪(ホリエモンこと堀江貴文氏が無実、無罪と言うことではありません)。世論に勧善懲悪が定着、一般大衆がそれを支持。付ける薬はないと割り切っています。
一方で誤認逮捕、冤罪被害者が相変わらず発生しています。勧善懲悪を支持する我々は事件・事故を起こさないという保証はあるのでしょうか。

Posted by: ゴルゴ十三 | 2006.01.25 at 12:23 AM

堀江氏が収監されている東京拘置所の過酷さをマスコミは伝えるものの無罪推定の被疑者への待遇として問題は無いのかという指摘がありませんね。東京拘置所の室内は薄暗く外が見えない構造だと聞きます。

ライブドアを支持した人々の中にはニッポン放送買収などで日本のマスコミを変えてくれると期待していた人がいたはずです。今のマスコミの報道は堀江氏に「裏切られた」人をますます失望させるだけでしょう。

ここまで株式市場が混乱したというのに、特捜部の検察官が全く姿を見せないというのはいかがなものでしょうか。特捜部は記者会見を開いて捜査の目的を国民に説明するべきでしょう。


Posted by: Piichan | 2006.01.26 at 01:21 AM

酔うぞさん、ゴルゴ十三さん、Pichanさん
 コメントありがとうございました。この所、多忙のためにお返事が遅くなりました。
 ブログでは、比較的冷静な意見が多いように感じます。マスコミは視聴率獲得のために、ライブドアを徹底的に叩く方向で動いているようですね。
 ちなみに、東京地検特捜部の部長や副部長は、逮捕時やその後も、記者会見を頻繁にやっているようですが、カメラや録音機の持ち込みを認めない形でやっているようです。内容については報道されています。
 私としても、今後のこの問題の推移を見守り、特に、ライブドア本体の粉飾決算事件の先に何が来るのかに注目したいと思います。

Posted by: ビートニクス | 2006.01.26 at 12:54 PM

税務署でも、目立ってる会社に査察に入るし、スピード違反だって、ネズミ捕りにかかった奴を捕まえる訳で、
ライブドアが目立ったから検察が動くという事を、「見せしめ」と批判するのに意味はないと思います。あえて言うなら、他所も捜査しろということでしょう。
何にせよ、多くの堀江支持者が生まれたのは、違法ではない「グレーゾーン」で堂々と活動した格好良さからで、実は「違法」で、バレないようコソコソと裏の活動もしてたなら、凋落は自然かと思います。
一般人であるなら、罪が確定してなくとも、その情報に信頼性があると思えば、それをもって判断する事も罪ではないですしね。
強制捜査前に、サーバーに残ってたメールを数万件削除したとか、報道された情報だけでも違法性の認識は感じられます。
又、マスコミによる堀江叩きの本質は、マスコミが買収の標的にされる昨今、潜在的にマスコミの敵であったものの、これまで適法とされてたから叩けなかった事の反動にある気がします。

Posted by: タコ | 2006.01.26 at 03:26 PM

しかも怖いのはこの逮捕が『普通のことだ』と思ってる人が非常に多いことです。(すくなくとも私の身の回りでは)

テレビではどこぞの評論家だかが、「今は紙でなくデータの時代だから極秘裏に捜査をして一斉に逮捕に踏み切る必要が…」などと、もっともらしいことを並べ立てて。
つくづく私たち一般人は報道に頼った物の見方しか出来ないんだと痛感しました。

Posted by: 通りすがり | 2006.01.26 at 04:18 PM

今回の事件は捜査されなかったらほとんど問題視されなかったと思われます。問題視されるとしたら業績が悪化した時です。

堀江氏らも「業績さえ上げれば問題無い」という考えの元、投資事業組合を利用した買収や子会社間での利益の付け替えをしていたのではないでしょうか。

Posted by: Piichan | 2006.01.26 at 10:04 PM

テレビのニュースを見て、違和感をずーと感じていましたが、このブログを見て、自分の違和感の中味が納得できました。

Posted by: kyouka | 2006.01.31 at 07:58 PM

「逮捕されて当然」という意見が多いのは、妬みと言うよりも、事件のシナリオに納得してるからだろ。
「勝ち組気取りの成り上がり」「態度のデカイ豚」「荒稼ぎした詐欺師」が「悪事」を暴かれて没落する。株で損をしていなければ、気持ちの良い話じゃないか。

証券会社とつるんだマスコミに騙される人も、少しは減るだろ。
だいたい学生だの主婦だのが株で儲けたというマスコミの報道は、とうにピークが過ぎたマネーゲームの、これから損を被ってくれるカモの募集なんだよ。

市場を混乱させた責任?
「無いものを有る」と偽った詐欺師と、それを看過した天下り連中の責任だろ。
どうしても地検に噛みつきたいなら「なぜもっと早く摘発しなかったのか」「他の詐欺師も捕まえろ」と言うべきじゃないか?

「大損した!」と喚いてる奴。
堀江の犯罪が事実なら、遅かれ早かれ破綻は免れない。放置していれば、後の破綻は今回以上の損害になる。それを防いだことの意味を考えろ。
自分のことしか考えず、目先の金銭で右往左往して、失敗すれば国が補償しろと声をあげる。それをする大人は、餓鬼乞食以下の人間だといい加減に気付いて欲しい。

Posted by: nn4 | 2006.02.06 at 06:06 PM

 東京地検特捜部も,この事件に関しては問題解決能力(状況判断,洞察力,行政的バランス感覚,経済感覚,一般常識)が欠如していて手に負えなかったのか?
被害や残った問題が大きすぎて,とても手柄とは言えない。おそらくクレームの方が多く,本人達も誰の為に頑張ったのか良く判らないと思う。
 しかしながら、今後もコンスタントに僅か(毎年上場企業の1%程度)でも同様な摘発を続けるべきだと思う。(但し,マスコミへの事前リークはまずい。)
 それは検察官の仕事だし,見せしめに遭った被害者達の気を鎮めるためだけではなく,いろんな株価が大きく動くので,短期投資の好機となる効果もある。 

Posted by: 権兵衛 | 2006.02.21 at 11:33 PM

石川神戸三宮元部長と隠匿社長と三菱信託銀行石渡 ほか数名を死刑にしてください

Posted by: 清水建設 | 2007.01.07 at 03:41 AM

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