防犯カメラに犯罪抑止力があるのか?
川崎市多摩区のマンションで、3月20日に、15階の通路から、そのマンションに住む小学生が転落死した事件とその9日後に、同じ通路から清掃作業員を突き落とそうとした事件について、4月1日、自ら出頭した40歳代の男性が殺人未遂などの容疑で逮捕された(毎日新聞の記事)。
この事件では、マンションに設置されていた防犯カメラの映像を公開したことが決め手となり、被疑者が警察に出頭してきたことと報じられている(なお、無罪推定から、この男性が犯人かどうかについてはここでは触れないこととし、以下の記述においても、仮にこの男性が事件に何らか関与をしていると仮定して論じる)。
今後、今回の事件が契機となって、全国のマンションで防犯カメラの設置に拍車がかかることが予想される。
そもそも、防犯カメラは「防犯」、すなわち、犯罪の予防のために設置されている。しかしながら、今回の事件でも、犯罪が起きた後の犯罪捜査に役立つことは示されたが、犯罪の予防や抑止には役立たなかったのである。
かつて、イギリスのロンドンで発生した地下鉄爆破事件の際にも、防犯カメラが多数設置されており、犯人を特定する犯罪捜査には役立ったが、犯罪抑止効果はないことが示された。
イギリスは、世界の中でも最も防犯カメラが設置されている国であり、約250万台の防犯カメラが街頭に設置され、市民1人につき、1日に300回以上防犯カメラに撮影されると言われている。
そのイギリスにおいても、内務省の調査によれば、防犯カメラはほとんど効果がなく、むしろ街灯を設置することの方が効果があるという結果が出ていると言われている(監視社会を拒否する会「NO!監視」ニュース第6号)。
最近、日本では、マンションに限らず、コンビニや地下鉄の駅や街頭に、次々と防犯カメラが設置されている。
また、地下鉄・霞ヶ関駅では、防犯カメラを利用した顔認証システムの実験が開始されようとしている(監視社会を拒否する会のホームページ「国土交通省に「顔認証システム」実験の中止を申し入れ」)。
また、警察が捜査目的で使用することを条件に、住民に月額1万円のリース料を負担させて、自宅の壁等に防犯カメラを設置する動きがあると言われている(「ニュースつまみ食い」さんの記事)。
これは防犯カメラを購入すれば100万円程度がかかるが、警察の捜査に協力する場合には安く防犯カメラを設置できるということで、多くの民間住宅に防犯カメラを設置しようという動きであると思われる。
ただ、今回の事件では、マンションに18カ所も防犯カメラが設置されていたが、それでも事件は発生したのであるから、防犯カメラの犯罪抑止効果はなかったとしか言いようがない。
報道の中には、被疑者が防犯カメラの設置を知らなかったとの報道もあるが(読売新聞の記事)、それでは、「防犯カメラ稼働中」と書いた看板等を立てていたら、今回のような事件が起きなかったかどうかは、結局、不明というしかない。
日経新聞4月2日付朝刊には、追手門学院大学の松野凱典教授(犯罪心理学)のコメントとして、
防犯カメラが犯罪抑止に有効なのは、空き巣の常習犯など計画性のあるタイプの犯罪者に限られる。抑止効果を過信すべきではない。
との冷静なコメントが掲載されていた。これは大変に腑に落ちる見解である。このようなコメントこそが、マスコミでは広く紹介されるべきであろう。
防犯カメラに犯罪抑止効果があるかという問題は、犯罪の刑罰の重罰化に犯罪抑止効果があるかという問題とよく似ているように思われる。最近では、耐震偽装事件が起きれば建築基準法の刑罰を重罰化したり、ライブドア事件が起きれば証券取引法の罰則の重罰化したりと、政府は、何か大きな事件が起きると、すぐに刑罰の重罰化に走ろうとしている。
しかしながら、重罰化することによって、犯罪抑止効果があるということはほとんど実証されていない。それにもかかわらず、闇雲に重罰化することによってその問題を解決したかのように済まそうとする政治のあり方は大いに疑問である。そして、それと同様に、防犯カメラを設置すれば犯罪が防止できるかのように考えるのも安易だと思われる。
いずれについても、どうして、そのような犯罪が起きるのかという犯罪の発生原因を分析し、その発生原因をどうやって減らしていけるかを専門家の知見を利用しつつ、社会全体で冷静に考えることが大切であり、安易に小手先だけの方法で解決しようとするのは安易に過ぎると言わなければならない。
その意味で、今回の転落死事件を契機に、改めて、防犯カメラのあり方について考える時が来ている。
特に、防犯カメラは、警察から、あたかも犯罪の予防や抑止の効果があるかのように説明され、民間で高い費用を払って設置されているが、費用対効果という観点から見て、防犯カメラを張り巡らせることにどれだけ意味があるかを考える必要がある。
言うまでもなく、警察にとっては、何か事件が起きた場合に、民間の費用で設置運営されている防犯カメラの映像だけを(無料で)使用できるメリットは大きい。しかしながら、設置する側の費用負担と犯罪の抑止効果はそれと比べると遙かに少ないのである。
このことを考えると、「防犯カメラ」という呼び方は不正確であるから「監視カメラ」と呼び換えた上で、今後、民間が設置することについては慎重に判断すべきである。
【Today's Back Music】
TOKU/A Brand-New Beginning(SICP-10019)
TOKU(flh,vo)の新譜ですが、しっとりとした曲が多く、味わい深いアルバムとなっています。
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Comments
>防犯カメラの犯罪抑止効果はなかったとしか言いようがない。
はぁ~バッカじゃねいの?w
防犯カメラを見て犯罪を思いとどまったオレ様がきましたよw
Posted by: 犯罪予備軍w | 2006.04.03 at 01:01 PM
ネットワーカー弁護士←こいつ抑止の語義しらなそう
Posted by: はあ? | 2007.12.28 at 12:34 PM