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2006.04.18

いよいよ共謀罪法案の審議が始まる

 犯罪をすることの合意があるだけで処罰できるという共謀罪の新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「共謀罪法案」という)が、いよいよ、4月21日から衆議院法務委員会での審議に入ることが決まった。
 もっとも、21日(金)には、与党から修正案が提出され、その趣旨説明が行われるだけで、実質的な審議入りは25日(火)からの予定である。

 4月18日から、衆議院法務委員会では、窃盗罪や公務執行妨害罪に罰金刑を新設することや略式裁判の上限の罰金を50万円から100万円に引き上げることなどを内容とする刑法・刑事訴訟法改正案が審議している。この法案は参議院先議で、参議院でも全会一致で可決している法案であり、衆議院法務委員会でも全会一致で可決されることが予想される。この法案については4月21日(金)で審議を終えて採決の予定となっている。

 問題となるのは、来週以降、どの法案が審議されるかである。現在、衆議院先議の法案で残っているのは、共謀罪法案、少年法改正案と信託法改正案である。

 今日の衆議院法務委員会の理事懇で、次に審議する予定について協議がなされ、次には、共謀罪法案を審議することが決まった。今のところ、前述したとおり、4月21日には与党修正案が提出され、その趣旨説明を行い、来週の4月25日(火)、26日(水)、28日(金)の審議が予定され、与党側は、4月28日にも採決をしたいと考えているという。

 私は、以前に、このブログの「共謀罪は修正すれば許容できるか?」において、
 

今年も「政治の季節」がやってきた。本年3月以降、衆議院法務委員会では、与野党の激しい論戦が予想される。今回が本当の意味での「最終決戦」になることが予想される。その意味で、今後の国会情勢を見据えながら、反対の声を大きくしていく運動が求められている。

と述べた。
 与党は、今通常国会で、共謀罪法案を修正の上、可決成立させることを至上命題として取り組んできており、いよいよ、共謀罪法案の審議に入ろうとしているのである。

 共謀罪の危険性については、以下のように、既にこのブログで何度も繰り返し述べてきた。与党修正案が出されたとしても、人と人のコミュニケーションそのものが犯罪となり、警察・検察の捜査の対象となるという共謀罪の本質は何ら変わらない。

 しかも、共謀罪の取締りのためと称して、盗聴法による盗聴の範囲は拡大されたり、室内盗聴が実施されるようになるなど捜査権限の拡大が次に控えている。「潜入捜査」と称する新しい捜査手法の導入も企図されるだろう。
 やがて、街中の監視カメラには高性能マイクが取り付けられ、コンピュータに予めプログラムされた危険な言葉を聞きつけたら、直ちに監視カメラがターゲットを撮影・録音するような監視社会が確実に訪れると考えられる。

 このような本質を有している共謀罪を、今すぐに設けなければならない国内での必要性(立法事実)も緊急性も認められない。

 共謀罪はそれ自体は、思想や信条と中立に見えるが、実は、法律を実際に運用する警察や検察が恣意的に適用することによって、極めて政治的に運用される危険性がある。

 今の日本は、確実に、「戦争ができる国」を目指している。既に有事法制は完成し、憲法改正が準備され、「侵略戦争」をする軍隊が憲法で認知されようとしている。

 このような日本にとって、戦争に反対する国民を検挙するための道具が共謀罪なのである。その意味では、戦前の治安維持法と同じ機能を果たすことが期待されているのである。

 私たちは、共謀罪の新設を絶対に認めることはできない。それは、自由で民主的な社会とは正反対の方向に向かわせるものだからである。今週末から審議入りする共謀罪法案に対し、多くの市民の反対の声を集めたい。

【過去の共謀罪法案の関連記事】
 「共謀罪を成立させて良いか?」
 「いよいよ共謀罪の審議入りが迫っている」
 「共謀罪を廃案へ」

【Today's Back Music】
 Harvey Mason Trios 2/Changing Partners
  ドラムスのハービィーメーソンが、多くの人気ピアニストと一緒に作るピアノ・トリオ・アルバムの第2弾。第1弾のHARVEY MASON TRIO/With All My Heartもいい作品でした。今回も大物ピアニストと組んで質の高い演奏を披露しています。

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Comments

初めまして。

良くこの手の話になると「戦争ができる国」を目指しているというフレーズを良く聞きますが、現在の政府は自衛隊の装備を削減しています。
これがどうやったら戦争が出来る国になると言うのでしょうか?

そもそも、現在進行形で日本は韓国に侵略されてますし、北朝鮮には人間が拉致されてます。そのための方策を、貴方は有事法制以外の方法で何か解決できるのでしょうか。

こういった質問にまともに答えていただけたことはないので、弁護士さんには是非とも伺ってみたいものです。

Posted by: TT | 2006.04.19 at 12:01 AM

TTさん
 コメントありがとうございました。
 「戦争ができる国」というのは、必ずしも、主体的に戦争をするという意味だけではありません。現在の日本は、完全にアメリカの下で、アメリカ軍を補完して、アメリカが行う戦争に、日本も協力せざるを得ないという立場にあります。そういう立場では、自衛隊の装備の削減も理解できるところですし、憲法を改正して、自衛隊を「軍隊」として認めさせた後で、軍備を増強することも考えられるところです。
 韓国に侵略されているという意味がよく分かりませんし、拉致問題を軍事力で解決すべき問題だとも思いません。

Posted by: ビートニクス | 2006.04.19 at 08:04 AM

謎だ。
どんな犯罪でも恣意的に適用すれば政治的弾圧に使えます。でも、あなたは、犯罪を処罰することについては反対じゃないですよね?まさか。
共謀罪はなにがちがうんですか?

Posted by: 謎だ。 | 2006.04.19 at 01:41 PM

謎だ さん
 コメントありがとうございました。
 共謀罪は、犯罪の結果(法益の侵害)はおろか、誰一人として、犯罪行為をしていない時点で、犯罪をすることの合意があることだけで処罰できるとするものです。
 それは、およそ「犯罪の実体」がないものを無理矢理、「犯罪」であるとレッテルを貼って処罰できるようにするものであり、そのような「犯罪」を処罰することには私は反対です。
 国家が、どんな行為でも「犯罪」と決めれば処罰できるとしたら、心の中で悪いことを考えただけでも処罰できることになります。共謀罪は、心の中で悪いことを考えて、それを複数の人と話をして合意すれば処罰できるというもので、心の中で思っただけで処罰できることと紙一重です。国会がそのようなものまで処罰することは許されないというのが近代刑法の原則です。

Posted by: ビートニクス | 2006.04.19 at 02:25 PM

はじめまして。
わたしは法律に関しては素人です。ただ法案をざっと見たところあまりに包括的に思えました。

今回の件では空恐ろしさを禁じえません。
国家権力にではありません。いつの時代もあまりに無知無関心な一般市民に対してです。ここまで来たかという思いです。

「戦争をできる国」。まさにその通りだと思います。盗聴法、有事法制、新ガイドライン、国旗国歌法、そして愛国条項、共謀罪とすべてワンセットにして考えると、この国のエスタブリッシュメントたちがどのような国家を目指しているかは自明ではないでしょうか。

国旗国歌法が現在どのように運用されているか。国会答弁すら何ら拘束力を持たない国です。〝政府の見解〟など言うまでもないでしょう。

Posted by: Aequitas | 2006.04.21 at 11:51 AM

Aequitasさん
 コメントありがとうございました。
 ご賛同いただき、ありがとうございました。
 今日、衆議院法務委員会で、共謀罪法案が審議入りしました。この時期に、この法案を急いで成立させようという動きが何を意味するのかをよく考えたいですね。

Posted by: ビートニクス | 2006.04.21 at 04:37 PM

Incredible points. Outstanding arguments. Keep up the amazing work.

Posted by: http://www.freewebsite-service.com/spectaculartyro91/blog.php?id=439824snavn=Blog+post | 2015.04.30 at 06:48 PM

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