共謀罪法案についての与党再修正案と迫る強行採決
5月12日の衆議院法務委員会の理事会の席上、与党は民主党に対して、再修正案を示した上で、来週の5月16日に審議を終結して採決することを求めたが、民主党は採決に応じなかった。しかし、来週前半での強行採決に向けて、事態は一層緊迫してきている。
与党側が民主党に対して示した共謀罪についての再修正案は次のようなものである(組織的犯罪処罰法の改正案)。
(組織的な犯罪の共謀)
第6条の2 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、組織的な犯罪集団の活動(組織的な犯罪集団(団体のうち、その共同の目的がこれらの罪又は別表第一(第一号を除く。)に掲げる罪を実行することにある団体をいう。)の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該組織的な犯罪集団に帰属するものをいう。)として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、その共謀をした者のいずれかによりその共謀に係る犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われた場合において、当該各号に定める刑に処する。ただし、死刑又は無期若しくは長期五年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪に係るものについては、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減刑し、又は免除する。
一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮
2 (略)
3 前二項の規定の適用に当たっては、思想及び良心の自由並びに結社の自由その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあってはならず、かつ、労働組合その他の団体の正当な活動を制限するようなことがあってはならない。
その要点は、共謀罪の適用対象となる「団体の活動」を「組織的な犯罪集団の活動」と改めて、その定義を示したことと、処罰条件について、「犯罪の実行に資する行為」から「犯罪の実行に必要な準備その他の行為」と限定したことなどである。
特に、「団体の活動」を「組織的な犯罪集団の活動」と改めた点が注目される。
すなわち、与党再修正案は、「組織的な犯罪集団の活動」の定義について、これを2つに分けて規定している。
まず、「組織的な犯罪集団」の定義として、「団体のうち、その共同の目的がこれらの罪又は別表第一・・・に掲げる罪を実行することにある団体」としている(別表第一から共謀罪は除外されている)。
次に、その「活動」の定義として、「その意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該組織的な犯罪集団に帰属するもの」としている。
これらの内容は、概ね、昨年の通常国会以降の衆議院法務委員会における法務大臣や政府委員等の答弁内容を、そのまま条文に取り込もうとしたものと考えられる。
しかしながら、こういう形で規定することが可能であれば、どうして最初に政府案を作成し法案提出する段階でそのように限定する条文としていなかったのかが厳しく問われなければならない。
その上で、ある程度、共謀罪の適用範囲を限定しようとしていることが認められるとしても、結局、共謀罪を適用しようとする警察や検察の恣意的な運用の危険性が完全に払拭された訳ではないことを指摘することができる。
3項については、人権を侵害しないようにという注意規定が入り、そこに「労働組合」が例示されているが、このような規定がほとんど実効性をもたないことは過去の同種の規定からも明らかである。
結局、与党の再修正案も、共謀罪の本質的な危険性を解消するにはまだまだ不十分であるし、民主党の修正案と比較してもまだまだ見劣りする内容である。
なお、いわゆる「密告規定」について、与党再修正案は、なぜか死刑又は無期若しくは長期五年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪についてだけ自首による刑の減軽・免除を認めているが、長期4年以上5年未満の犯罪についてそれを認めないということになるが、その趣旨は理解不能であり、この部分の法律としての出来はかなり悪いと言わなければならない。
ところで、ここ最近の衆議院法務委員会での審議においては、共謀罪新設の根拠となっている国連越境組織犯罪防止条約の解釈が度々論争になっている。
特に、民主党の修正案が求めている「越境性」の要件については、与党側は、政府が、国連越境組織犯罪防止条約34条2項が、「条約の締約国の国内法において、国際的な性質とは関係なく定める」という規定をしていることを根拠にして、越境性を要件とすることは条約に反するから許されないと主張している。
しかしながら、元々、この条約は、越境的な組織犯罪組織と戦うために定められた条約であり、越境性はその本質的な要件であるはずである。
それは、越境組織犯罪防止条約3条1項が次のように規定していることからも明らかである。
この条約は、別段の定めがある場合を除くほか・・・性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用する。(以下、略)
また、条約と一体をなす「公的記録のための解釈的注(travaux prepatoires)」は、34条2項について、条約の適用範囲を変更したものではなく、越境性が国内法化の本質的な要素ではないことを明確化したものであると述べており、この注と条約本文を併せて読めば、この条約を国内法にする際に、越境性の要件を法律に入れても入れなくても良いと読むのが正しいと考えられるのである。
したがって、与党側が、政府の説明を鵜呑みにして、越境性を要件としては「ならない」と主張しているのは、条約の解釈としては正しくないと言わなければならない。
もっとも、共謀罪に越境性の要件を入れれば、その本質的危険性が払拭できるかというと、それにも疑問がある。
国連越境組織犯罪防止条約2条2項は、どういう場合に越境性があるかについて、次のような規定を置いている。
(a) 二以上の国において行われる場合(b) 一の国において行われるものであるが、その準備、計画、指示又は統制の実質的な部分が他の国において行われる場合
(c) 一の国において行われるものであるが、二以上の国において犯罪活動を行う組織的な犯罪集団が関与
する場合(d) 一の国において行われるものであるが、他の国に実質的な影響を及ぼす場合
このうち、特にdの規定は、越境性の要件を非常に緩和するものであって、ここまで広げることには疑問がある。
また、そもそも、最近の運動は国際連帯の中で行われることも多いから、越境性の要件を入れても、そのような運動団体には共謀罪が適用される可能性が残ることになる。
また、警察など当局の判断からすれば、グリーンピースやアムネスティのような団体については、簡単に越境性の要件をクリアするとも考えられる。
したがって、越境性の要件を入れれば、共謀罪の本質的危険性が完全に払拭されるものではないことを知っておく必要がある。
そもそも、国連越境組織犯罪防止条約は、組織犯罪と戦うための国家権力側の「武器」(捜査権限)を「世界標準」にして、同じような武器を世界各国が持つように広げようとするものである。
ここで注意しなければならないのは、そこで言う「世界標準」というのは、決して文字通りの意味ではなく、要するに「アメリカ型」ということである。
共謀罪について言えば、イギリスやアメリカに以前からある「コンスピィラシー」を、「世界標準」にしようとしているのである。
このように見てくると、現在の日本の小泉政権がアメリカのいいなりになって軍事的な一体化を推し進めて、「戦争ができる国」になろうとしていることと、今回の共謀罪新設に向けた強行姿勢とが重なり合っていると言える。
アメリカは長らく、国連越境組織犯罪防止条約を批准していなかったが、2005年11月にようやく批准している。おそらく、その後、アメリカから日本政府に対して、早くこの条約を批准するようにという圧力がかかっていることが予想される。
実は、国連越境組織犯罪防止条約の審議過程において、日本政府は、当初、共謀罪は我が国の法体系に反するとして反対していたが、途中でその態度を変え、組織犯罪集団に限定して共謀罪を作る方針に変更している。この態度変更についても、アメリカからの圧力がかかっていたことが予想されるところである(条約の審議過程における非公開協議においてそのようなやりとりがあったことが予想されるが、外務省・法務省はその部分の報告書を情報公開請求に対して黒塗りにしている)。
与党側は、5月12日の衆議院法務委員会の理事会で、5月16日の採決を主張しており、同日夕方の強行採決の可能性が出てきている。
その日は、教育基本法改正案が衆議院本会議において趣旨説明を行って審議入りすることが予定されているが、それが終われば、同法案に対する影響は少ないと見て、与党が強行採決をする可能性が出てきているのである。
社民党の保坂展人・衆議院議員も、そのブログで、「強行採決の危険も相当にある」と述べている。
衆議院法務委員会での共謀罪法案の採決は確実に迫っている。後は、どれだけ世論が盛り上がって、与党に対する圧力となるかである。
ネットの中では、いろいろなブログが、一斉に、共謀罪新設への不安を訴えるようになっており、どんどん広がっている。テレビでも、共謀罪を取り上げることが多くなっている。
今日の午後5時半から、国会で開かれた「『共謀罪』の強行採決に反対する!超党派議員と市民の緊急院内集会」にも、多くの国会議員と市民が集い、共謀罪に反対し、来週の採決をさせないという決意が多く語られ、熱い集会となった。
確実に、市民と国会議員との連帯が作られ、共謀罪反対の声は、燎原の火のように、勢いを増しながら市民の間に広がりつつある。この民意が、どれだけ今後の国会審議に影響を与えることができるかが試されている。
【Today's Back Music】
秀景満/Contrail ピアニストである村井秀清と、ドラマーである平井景、ベーシスト須藤満の3人によるトリオのファースト・アルバム。非常に勢いを感じるライブっぽい演奏とバランスの良い楽曲が聴ける。
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Comments
共謀罪は悪法ではありません。
詳しくはこちらをご覧下さい。
http://gumin.xxxxxxxx.jp/67.html
愚民社会を考えるも宜しくお願いします。
http://gumin.xxxxxxxx.jp/
Posted by: 救世主かける様 | 2006.05.24 at 06:23 PM