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2006.06.02

急転直下の共謀罪法案の採決が迫っている

 共謀罪の新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「共謀罪法案」という)について、明日にも、衆議院法務委員会で採決されて可決され、今通常国会で成立する可能性が出てきたと報道されている。


 共謀罪法案は、本年4月21日に衆議院法務委員会で審議が再開されて以来、何度も強行採決の可能性があるとして、その度に緊迫する情勢を迎えてきた。

 ところが、法務委員会の与党の理事レベルで強行採決が確認されていた5月19日、河野洋平衆院議長が、自民党の細田博之、公明党の東順治両国対委員長と会談し、共謀罪について「マスコミの大関心事で、私も事態を心配している」と述べて慎重な対応を求めた結果、その日の採決は回避されることになった。

 その後、石原伸晃・衆議院法務委員長から、与野党各3名ずつの実務者会合を開きたいとの意向が示され、自民党、公明党と民主党による実務者会合が始まっており(但し、社民党は廃案を求めていることからこの実務者会合には参加していない)、何度か開かれてきた。

 そのような状況の中で、5月30日、小泉首相が国会の会期延長を否定し、翌5月31日には、政府・与党が、今通常国会の会期を延長しない方針を固め、共謀罪法案についての衆議院法務委員会での採決を見送り、継続審議として、秋の臨時国会での成立を目指す方針を決めたと報道されていた。これによって、共謀罪法案が、今通常国会で成立する見込みはなくなったと誰もが考えたはずである。

 ところが、与党は、6月1日の衆議院法務委員会の理事会において、民主党の修正案をそのまま受け入れる考えを表明した。これを受けて、民主党は、国連越境組織犯罪防止条約との整合性を政府側が確認することを条件に、6月2日の衆議院法務委員会での採決に応じる構えで、一転して、今通常国会で、共謀罪法案が成立する可能性が出てきたのである。

 しかも、朝日新聞の報道によると、政府・与党は、民主党案では条約の批准はできないとの見方が強いので、与党としては、とりあえず今通常国会で、民主党案を「丸呑み」して共謀罪法案を成立させた上で、次の国会(秋の臨時国会)で、条約の要件にあわせて再修正を図る構えだと報じられている(asahi.comの記事)。

 ところが、これまで与党は、民主党の修正案に対しては、条約違反であるから採用できないと繰り返し、国会の内外で発言してきていた。

 例えば、自民党の平成18年5月16日付「犯罪の国際化、組織化、高度情報化に対処する刑法等改正案(条約刑法-いわゆる共謀罪)について」は、次のように述べて、民主党の修正案を批判している。

民主党は対案として修正案を提出していますが・・・条約に違反する内容であるばかりか、肝心の国民の安全や不安の解消に何の効果も及ぼさない、全く不十分な内容になっています。

 また、公明党の機関誌である公明新聞2006年5月29日付は、「組織犯罪処罰法改正案Q&A」の記事において、「Q 民主案はどうなのか」という質問に対して、「A 国連条約に違反する内容なので、成立しても条約締結ができない」として、次のように述べている。

民主党は国連条約に反する同党修正案に固執するのみで、共同修正を行うことも、与党の再修正案に対する対案を出すこともできないままでいるのが実情です。  「できるだけ多くの人が納得できる法改正に」との与党の歩みよりに対し、民主党の不誠実さがあらわになっています。

 ところが、一転して、その不十分だという民主党の修正案を「丸呑み」しようというのであるから、政治的妥協も極まれりと言わなければならない。与党には政治的信念や確信はないのかと言いたい。

 しかも、とりあえず、民主党の修正案を「丸呑み」した上で共謀罪法案を成立させた上で、秋の臨時国会で、条約に併せて再修正をする、すなわち、与党の再修正案に戻すことが予定されているというのであるから、「国会の権威」を否定するだけでなく、国民を騙し欺くものと言わなければならない。

 今回の政府与党の「豹変ぶり」には、7月中旬に開催される主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)の前に共謀罪法案を成立させて、国際社会に対して、日本も組織犯罪やテロへの対策をとっていることを示したいということがあるようである(MSN-Mainichiの記事)。

 また、昨年12月に、アメリカ合衆国も、国連越境組織犯罪防止条約を批准し、G8の中で同条約を批准している国が残り少なくなっているという事情もあるだろうし、おそらく、アメリカから日本政府に対して、条約批准へのプレッシャーが相当かかっていることも予想される。

 5月19日の強行採決の中止には、小泉首相の「鶴の一声」があったとの朝日新聞の報道もあった。今回は、逆の意味での「鶴の一声」があったのかもしれない。

 その意味で、民主党の小沢代表が、「首相に『サミット土産』を与えるだけだ」というのは正に正鵠を得ている。

 それにしても、今日1日の衆議院法務委員会での動きはあまりにも性急に過ぎる。そして、民主党としては、「丸呑み」されたからと言って、安易に6月2日の衆議院法務委員会での採決には絶対に応じるべきではないし、応じることは、これまで民主党を支持してきた国民を裏切るものであるし、「茶番」と言われても仕方がない。

 民主党としては、「これまでの国会審議や実務者会合を通じて、新たな問題点が浮かび上がった」として、従来提出していた修正案を撤回し、ハードルを高くした新たな修正案を提出することもできるはずであるし、そのためには多少の検討する日数も必要であると主張できるはずである。もっと智恵を絞って欲しい。

 そもそも、話し合っただけで犯罪として処罰することができるという共謀罪法案については、民主党の修正案でも、その本質的な危険性は完全に払拭されていないし、国民の不安は何ら解消されていないのである。

 もう一度、諸外国の情勢の調査等も踏まえて、国会において、慎重な議論を尽くすべきであるし、共謀罪法案は一旦廃案にすべきである。

 ただ、取り急ぎ、私たちは、国会で行われようとしているとんでもない事態に対して、みんなで声を集中する必要があるだろう。

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Comments

特捜部、お前もか!と、早合点するところでした。
ニッポン放送でインサイダーと言えば、順番が違うんじゃないの?社会保険庁とは違って、あんたら国家権力の代表選手見たい方が、これじゃ、
この国の秩序の崩壊か!!  と。
ライブドアの件、ちゃんと反省しての事だったんですね。
何とか共謀罪の立法を阻止すべく、村上さんを使うとは。
見直しました。

Posted by: 村上さんの後輩 | 2006.06.03 at 06:38 AM

身に覚えがないのに、共謀罪に問われた場合、どうすれば身の潔白を証明できるでしょうか。特に、会ったことのある人が、「そのとき共謀した」とウソの自白をした場合。何も物的証拠が残らない犯罪だけに、恐ろしいものを感じます。

Posted by: 共謀罪 | 2006.06.05 at 10:49 AM

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