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2006.10.29

単位偽装問題は教育委員会潰しか?

 10月24日、富山県立高岡南高校において、地理歴史教科を選択制としたために、3年生197人全員が卒業に必要な科目を履修していなかったことが分かったと報道されて以来、毎日のように、全国各地の高校で同様の「単位偽装」が次々と明らかになり、10月28日の夕方の時点で、毎日新聞の報道では、41都道府県407校に達するに至っている(毎日新聞の記事)。

 全国の高校による「単位偽装」問題は、多くの高校で、1990年代半ばか2000年代の前半のいずれかから、「単位偽装」を始めており、1994年度から世界史が必修になったことと2002年度から公立学校の完全週5日制が導入されたことが大きな契機となったと指摘されている(朝日新聞の記事)。

 ここで疑問に思うのは、そんなに前から広く行われていた高校での「単位偽装」が、どうして、ここに来て急に大きく報道され始めたかである。

 これは、安倍内閣が、教育改革を全面に掲げるとともに、今臨時国会での教育基本法改正案を可決を目指す姿勢と全く無関係ではないと考えられる。

 しかも、安倍内閣は、2006年10月10日、「21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を図っていくため、教育の基本にさかのぼった改革を推進する必要がある」として、内閣総理大臣、内閣官房長官及び文部科学大臣並びに有識者によって構成される教育再生会議を設置し、既に、2回の会議(10月18日、10月25日)を開いている。

 教育再生会議では、福岡で起きたいじめ自殺事件について、委員を派遣して調査を行い、派遣された義家弘介担当室長が教育委員会の対応を批判し、今後、この問題を教育再生会議で取り上げることを明らかにしている。

 このいじめ自殺事件に引き続いて明らかになったのが、全国の高校での「単位偽装」問題であった。連日のように倍々に増えている該当校の広がりを見るにつけ、この動きには何らかの意図を感じざるを得ない。

 安倍首相は、10月27日、官邸において記者団に対して、「子どもたちに原因があるわけではなくて、学校側に原因があり、教育委員会もチェック機能を果たし得なかったことに問題がある」と指摘した(東京新聞の記事)。
 ここにはっきりと、現在の教育委員会制度のあり方を批判する視点が現れている。

 教育委員会は、戦後、アメリカ型の「教育委員会」制度を導入したものである。

 すなわち、戦前においては、地方教育行政機関であった府県知事・学務課長は、ほとんどが内務省官吏であり、地方教育行政は、人事監督面を軸として、一般内務行政に従属させられ、中央集権的・政治的性格を濃厚に有していたとされる。
 これを、一般行政権に対して職務の独立性を持つ行政委員会として、地方自治の主軸をなす公選の首長に対して地方教育行政の政治的中立化を図るとともに、地域教育行政の文化的独立性を確保するために、教育委員会が設置されたのである(以上、兼子仁『教育法〔新版〕』有斐閣1978年349頁)

 安倍内閣は、「教育改革」を掲げているが、その本日は国家主義にあり、地方分権を前提として、さらに地方の首長からも政治的に独立して存在している教育委員会制度を疎ましい存在と見ていることが窺われる。

 そして、できることならば、現在の教育委員会制度を廃止して、「与党政治的な中央教育行政を全国の公立学校にその学校管理権を通じて貫徹させる」(前掲・兼子350頁が、こういったものであってはならないと述べている)機関として「再生」させて、中央集権的な教育システムを構築することを構想していると考えられる。

 今回の全国の高校の「単位偽装」問題は、そのための最大の材料として利用されていると考えられるのである。

 インターネットのブログの中でも、今回の「単位偽装」事件について、このような危険な動きだと察知している方が現れている。

 「四国LAW/Buchi研」さんは、次のように指摘して警鐘を鳴らしている(「高校必修科目未履修問題と学習指導要領の法的拘束力」)。
 

安倍総理は教育改革に熱心で、初等・中等き教育の最終的責任は文部科学省か教育委員会のいずれが負うかをはっきりさせたるべきとのこと、多くの関係者が黙認してきた問題が今の時期問題視され始めたことは、各自治体の教育委員会が教育に責任を負う現行制度を改めるための布石というのは穿った見方か。生徒に説明していなかったり、虚偽報告していた高校側は責められるべきとしても、教育現場に混乱をもたらしている原因として国の政策が直ぐに変わることも大きい。教育を政治のおもちゃにして欲しくないものである。

 私も、まさに同感である。

 また、この問題は、確実に、与党の教育基本法改正案の採決を後押しする流れにも確実に繋がっている。安倍内閣は、同法案の今臨時国会での成立を目指して血道をあげており、野党の強い反対にもかかわらず、11月上旬には衆議院で可決させ参議院へ回付することを虎視眈々と狙っている。そして、その先には、共謀罪法案も息を潜めて待っているのである。

 私たちは、日々、該当校が倍々と増えていく「単位偽装」問題の表面だけにとらわれず、その背後にある政府の狙いを読み取っていかなければならない。

【Today's Back Music】
 SunMin thanX Kubota/Keep Holding U(VICL-36076)
 久保田利伸と女性新人歌手のソンミン(SunMin)とのデュエット。映画「日本沈没」の主題歌として使用された。ソンミンのボーカルが光っている。

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教育基本法改正問題」カテゴリの記事

Comments

教育委員会潰しか?と言われると「そうかもしれない」とは思いますが、それ以上に「教育委員会攻撃」であることは確実です。

というよりも、勢力争いですね。

今回、最初に問題が明らかになったのは、富山県の高岡南高校と言うところですが、記事を探したのですが見つからなくなってしまいましたが、この高岡地区は4つの高校を2つに統合するとかいう案が検討されているのです。

公立高校の統合というと、人口減でもあり当然のことと思いますが、実際に統合となるとかなりの競争になります。

まず、統合する事実は「××高校を○○高校に統合する」とはしないで「××高校と○○高校を統合して、新たに□□高校とする。場所は○○高校とする」とやるわけです。

こういう風に出てきますから、××高校にとっては「我が校に統合してくれ」とは言えません。
また、必ずしも成績の悪い方を成績の良い方に統合するとも限らない。
建物とか交通の便、今後の入学者はどちらに学校を置いた方が増えるか、といったことを考慮するからです。

しかし、現場では「伝統を引き継ぎたい」とか「新たな職場で主導権を取りたい」といった駆け引きはあって、わたしが関わっている総合学習は各校ごとに何をやっても良いので思い切り力を入れてくる学校もあります。

この統合問題が今回のリーク(と言って良いでしょう)の根本原因ではないか?と思っています。

第一タイミングが良すぎる。
楽勝で取り返すことが出来ない、冬の前でありながら、補習すれば何とかなる時期というのは今しかないです。

次に問題になった学校の名前に妙に「南高校」とか「東高校」が多いように感じます。
これは多分地域で二番手の学校でしょう。

推測になりますが、二番手の学校の進学成績が良いのだが、それが統合で一緒になると本家を奪われるとか考える勢力が、どこでもやっていた必修科目のすっ飛ばしに目を付けとリークした。

こんなところじゃないでしょうか?
現場的には教育委員会に問題ありだと思います。
莫大な予算を使い管理権を独占しているのに、現場を見ていない。
多勢に無勢という点からも教育委員会は叩きやすい対象になってしまっていますが、埼玉県のプール事故がきっかけで全国的にプールの管理が出来ていないといったことも教育委員会の程度を示しているでしょう。

制度の問題というよりは、教育行政の専門家が極端に少なく、優秀な資質の人はもっといない、という現実が問題だと思います。

Posted by: 酔うぞ | 2006.10.29 at 01:28 AM

いつも拝見しており勉強さして頂いております。

今回も勉強になりました。
わたしは、今回の問題の端緒は、反政権側から出されたのだと思っておりましたが、政権側からのアプローチには、とても勉強させられました。
拙ブログでは、問題のリークは「教育基本法」改正反対のため、教育委員会に対抗するためではないか、なんて書いてしまいました。

今後も勉強させて頂きます。

Posted by: konaki | 2006.10.29 at 08:23 PM

単位不足問題、突然出てきて、全国化する勢いが、あまりに異様でしたから、「何か」ある、とは思いました。
どうして、「今頃」なのだろう、というのが素朴な疑問です。
あまりにおかしいですからね。
教育基本法がらみ、というのはうなずけますね。
こういう突発的な「問題化」現象に、みんな、おかしいとは思わないのでしょうか。

Posted by: ERI | 2006.11.01 at 09:08 PM

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