鹿児島選挙違反事件の無罪確定が示す警察取調べ可視化の必要性
鹿児島地方裁判所(以下「鹿児島地裁」)は、本年2月23日、2003年4月の鹿児島県議選をめぐる公職選挙法違反(買収・被買収)の罪に問われた鹿児島県志布志市の元県議・中山信一被告ら12人の被告全員に無罪判決を言い渡した。
鹿児島地方検察庁は、控訴期限である3月9日までに控訴せず、3月10日午前0時をもって、無罪判決が確定した。
鹿児島地裁の谷敏行裁判長は、中山元県議らのアリバイの成立を認めて「買収会合は存在しない」と認定した上で、捜査段階で容疑を認めていた5被告の自白調書について、「警察の押し付けや誘導がないと、このような供述にはならない。追及的・強圧的な取り調べがあったことが強くうかがえる」と判断して自白調書の信用性を否定した。つまり、事件は架空の事件をでっち上げたものであり、そのストーリーに沿う虚偽の自白調書が作成された大冤罪事件であったことが明らかとされたのである。
弁護人によると、取り調べに費やされた時間は、被告人1人当たり平均550時間以上にものぼると指摘されているという。警察官がこのような異常に長時間の取調べを行う中で、自白が強要され、5人の被告人は虚偽の自白をさせられたと考えられる。
この事件は、警察官の取調べの際に、密室である取調室において、強圧的で自白を強要する取調べが現に行われていることを示すとともに、その暴走を、検察官もチェックしたり止めることができず、ありもしなかった事件が起訴されることがありうることを明らかにしている。
改めて、密室である取調室での警察官による取調べを何らかの方法で規制することの必要性が、改めて浮き彫りになったと言える。
2006年5月、最高検察庁は、裁判員対象事件における被疑者取調べについて録画・録音の試行を開始することを発表し、同年7月以降、東京地方検察庁においてその試行が始まっている(まだ試行の件数はそれ程多くはない)。
2007年2月以降、全国の主要な地方検察庁においても、被疑者取調べの録画・録音の試行が始まることになっており、検察庁では今年12月まで試行を続けて、本格的に導入するかどうかを決める方針と伝えられている。
これに対して、警察庁は、最高検察庁による録画・録音の試行の発表の後も今日に至るまで、警察官による被疑者取調べの録画・録音には一貫して否定的・消極的な態度を示してきた。
その理由として、「取調べは、捜査官と被疑者との信頼関係を構築する中で行われるもので、録画・録音は信頼関係構築の支障になる」と主張してきた。
しかしながら、元々、圧倒的な捜査権力を背景に行われる取調べの場において、捜査官と被疑者が、対等な立場で「信頼関係」を築けるはずがないことは明らかである。
そのようなありもしない「信頼関係」の構築を理由に、取調べの録画・録音を否定するのには、別の理由があると考えざるを得ない。それは、すなわち、現に行っている捜査官による日常的な「自白の強要」の事実を明るみにしたくないという理由しか考えられない。
鹿児島事件では、警察官における被疑者取調べこそ、その全過程を録画・録音して可視化しなければ、現場の捜査官の暴走を止められず(この事件の報道では、現場の捜査官による「暴走列車を止められなかった」という表現が使われている)、自白の強要による冤罪の発生を阻止することはできないことがはからずも示された。
警察や検察では、今後、内部調査を行って再発防止を検討するとしているが、「内部」の者だけで調査を行っても、身内をかばってしまって、期待された結果が出る保障はない。海外では、この種の事件が発生した場合には、外部の者を中心とする調査委員会を作って、徹底的に調査を行い、再発防止のための提言等を行わせるのが普通である。この事件についても、外部の者が入って徹底的に調査して、再発防止のための提言を行う必要がある。
鹿児島事件が起きた原因については、単なる「取調べの可視化」の問題だけでないことは確かである。代用監獄(代用刑事施設)における長期勾留を認める「人質司法」も大きな問題である(武内謙治教授の「Heimweh nach der Zukunft」)。
ただ、すぐに始められることは、警察官による被疑者取調べの全過程を録画・録音して可視化することである。
海外においては、既に、警察官による被疑者取調べが録画・録音されて可視化するのが国際的潮流となっている。アジアにおいても、韓国、台湾において実施されているし、イギリス、イタリア、オーストラリア、アメリカにおいても広く実施されている。
今回の鹿児島事件でも、刑事裁判のほとんどは、自白調書の任意性をめぐる審理がほとんどであったと言われている。そのような不毛な争いをこれ以上続けるべきではない。鹿児島事件でも、被告人の1人は判決を聞かずに亡くなられている。その無念さをいかばかりであったか。
警察官による被疑者取調べの全過程を録画・録音して可視化すれば、自白調書の任意性の問題については、録画テープを再生して検証するだけで、ほとんどの問題は解決し、法廷で不毛な論争をしなくても良くなる。
もう一方の問題である「人質司法」の問題を解決するためには、色々な法制度を大きく変える必要があり、すぐには実現できそうもない。これに対して、取調べの可視化は、予算措置を講じて録画設備を整えるだけですぐにでも実施可能であり、法制度を大きく変える必要はない(証拠能力の問題等若干の法整備が必要であることは当然としても)。
その意味において、警察における被疑者取調べについて、1日も早く、録画・録音による可視化を実現すべきである。今回の鹿児島事件の教訓を生かすには、それしかない。鹿児島事件の被告たちが、早くから、「取調べの可視化」に共鳴し、それを訴えてきたことを無駄にしないためにも、何としても実現しなければならない。
【Today's Back Music】
Dave Koz/ The Dance
サックス・プレーヤーの少し前のアルバムです。初めて聴きましたが、非常に綺麗な音色と、聴きやすい演奏で聴く者を癒してくれます。
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» [刑事訴訟法] 「無罪確定当然の帰結」 県議選違反事件で県弁護士会長が会見 来月、再発防止へシンポ [Heimweh nach der Zukunft]
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kagoshima/news001.htm 2003年の県議選公選法違反事件で、志布志市の元県議中山信一さん(61)ら12人の無罪が確定することを受け、県弁護士会(川村重春会長)は9日、鹿児島市の県弁護士会館で記者会見した。川村会長は「県警... [Read More]
Tracked on 2007.03.10 at 10:35 AM
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以下は2月22日付けの『社会保険庁の解体=完全犯罪の完結:あと一息ですべての証拠は隠滅され究極のマネーロンダリングが完了する』と題するエントリに付けられたコメントに対する私の応答の一部を再録したものである(多少の加筆・補正を加えた).振り返ると2月22日というのは下記に示す『911がインサイドジョブであったことを裏付ける決定的かつ致命的な物的証拠』を暴露した情報が世界を駆け巡る発端となった日付であるようだ※.3月2日に真名さんから以下のような提起があった.
Commented by 真名 at... [Read More]
Tracked on 2007.03.11 at 08:37 PM
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Tracked on 2007.03.13 at 12:43 AM
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12被告全員に無罪 県議選選挙違反 鹿児島地裁判決 事件の存在否定 自白を強制、誘導(西日本新聞) - goo ニュース
上記の鹿児島地裁判決や関連の踏み字訴訟判決などで捜査機関の自白を強要などの違法捜査はあきらかある。
鹿児島地検など捜査機関は猛反省をして、二度とえん罪事件を繰りかさないよう取調べの手法など捜査全般を見直すべきである。
また関係機関は取調べの録画や取調べ担当者の公表などの法整備を早急に取り組んでほしい。
... [Read More]
Tracked on 2007.03.16 at 02:35 PM
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03年鹿児島県議選の曽於郡区で公選法違反に問われた事件で、鹿児島地裁(谷敏行裁判長)は、被告人12名全員について、無罪判決を言い渡しました。南日本新聞その1 その2 西日本新聞 読売新聞
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Tracked on 2007.03.20 at 10:48 AM

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Posted by: Eagles | 2007.09.21 at 08:29 AM