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2007.11.11

少年審判に犯罪被害者等の傍聴を認めるべきか

 自民党の政務調査会・法務部会の少年法に関する小委員会は、被害者団体や日弁連からヒアリングを行い、「少年法見直しに関する取りまとめ」を行い、本年11月 9日、法務部会において、一部変更の上で了承した。鳩山法務大臣は、11月29日に、法制審議会に少年法改正についての諮問を行う方針を決めたと報道されている(以上、毎日新聞の記事)。

 既に、今年の通常国会においては、刑事訴訟法が改正されて、刑事裁判に犯罪被害者やその遺族(以下「被害者等」という)が直接参加する被害者参加制度が創設されている(但し、施行は公布から1年半後とされているのでまだ未施行)。

 少年法は、議員立法により、2000年に厳罰化する方向で改正された際に、施行から5年後に見直しをすることが附則で定められており、今回の改正は、その見直しとして行われようとしている。

 自民党の政務調査会法務部会の取りまとめは、被害者等による少年審判の傍聴を認めること及び少年保護事件における記録の閲覧・謄写の要件を緩和する等その範囲を拡大することなどの法改正を求めるとともに、被害者団体が求めていた少年に対する質問権などは盛り込まれていない。

 小委員会においては、少年審判の傍聴を認める対象事件を重大事件に限定する案が示されていたが、法務部会で異論もあったことから、最終的な「取りまとめ」では、その部分を削除している。その結果、どんな軽微な事件についても被害者等が傍聴できることを求める内容となっている。

 今回の少年法改正の最大の焦点は、現行の少年法22条2項が「審判は、これを公開しない。」という審判不公開の原則の変更を認めるか否かである。

 この原則は、人格的に未熟で傷つきやすい少年の情操を保護するとともに、少年の非行を秘密にすることで社会復帰を容易にするために当然の原則であるとこれまで考えられてきた。被害者等による傍聴を認めることはこの原則に対する大きな例外を認めることになる。

 少年審判では、14歳以上20歳未満の少年が審理を受けているが、審判室は決して広くなく、被害者等が傍聴するとしたら、非常に少年に近い場所から傍聴することになる可能性がある(自民党の取りまとめは、少年が萎縮しない方法による傍聴を認める可能性を示唆している)。

 特に、年少少年(14歳から16歳まで)については、被害者等が傍聴していることを意識してしまったら、自分が経験した事実や心情を率直に述べることが極めて難しくなるのではないかと思われる。元々、年少少年については、人前で自分で思ったことを話すことだけでも大変であり、被害者等が傍聴し、自分が話した内容によって、その被害者等から種々の反応があることを考えると、少年が言いたいことがほとんど言えなくなってしまう可能性がある。そして、それは、年長少年(18歳から20歳未満)についても、大きく異なることはないと考えられる。

 自民党の取りまとめでは、被害者等がいる場で審判を受けることが少年の内省を深め、少年の健全育成に資すると述べているが、それは現実には極めて困難であると考えられる。

 少年審判においては、まず、少年自身が、自分の行った非行と正面から向き合い、裁判官や調査官や付添人からの問いかけに対して、自分の考えを率直に話すことができることが前提となっており、それが審判の出発点でもある。そのために、少年法は、審判非公開の原則をわざわざ規定しているのである。

 少年審判に対する被害者等の傍聴を認めることは、それを行うことを阻害し、被害者等の反応を気にすることによって少年を萎縮させて、言いたいことを自由に言えなくしてしまい、ひいては、少年が真に更生し社会復帰することを妨げるおそれがある。

 まもなく、法務大臣が法制審議会に諮問し、12月以降、少年法部会において審議されることになるが、来年の通常国会に少年法改正案を提出するために、極めて短期間で審議がなされるおそれがある。刑事訴訟法を改正して被害者参加制度を設けるための法制審議会においても拙速な審議がなされた。その誤りを繰り返すことなく、時間をかけるとともに、多くの関係者の意見も聴いた上で、慎重に審議が行われるべきである。

 なお、今回の自民党の取りまとめでは、被害者等の質問権などは先送りされており、少年審判の傍聴と記録の閲覧・謄写だけの改正を求めるものとなっている。
 しかしながら、一旦、被害者等に少年審判の傍聴を認めれば、傍聴して黙って聞いているしかできないのかという不満が出て、次には、質問権などの要求が次々と出される可能性がある。それらも見越した上で、そもそも、少年審判に被害者等の傍聴を認めるか否かを慎重に議論すべきである。

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