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2008.11.26

厚労省元事務次官宅への襲撃事件について考える

 2008年11月17日から18日にかけて、さいたま市で、旧厚生省の元事務次官の山口剛彦夫妻が殺害されるとともに、東京都中野区の元事務次官の吉原健二宅で妻が刺されて重傷を負う事件が発生した。

 マスコミは、事件発生直後から、事件の真相も何も分からないにもかかわらず、この事件を「年金テロ」ではないかと、大きく、センセーショナルに報道した。

 その後、11月22日の夜に、40代の男性が、軽乗用車に乗って、警視庁本部に出頭して、「事務次官を殺した」と話したことから、事件は急展開を示している。

 その男性は、犯行の動機について、「昔、保健所にペットを殺され腹が立った」などと述べているとされ、乗り付けた軽乗用車の車内には、複数のナイフ、段ボール箱、運動靴などがあり、一部のナイフと箱には血痕が付着していたという。そして、その後、DNA鑑定によって、ナイフに付着した血痕のDNAが被害に遭った元次官や妻計3人の血液とそれぞれ一致したと発表されている。

 この事件は、当初から、何故に、10年以上も前に退職している元事務次官を狙ったのか、その動機が分からないなど腑に落ちない事件であった。

 ところが、当初から、マスコミは、これを「テロ事件」と報道したことによって、日本中を緊張状態に陥らせた。当初から、この事件が政治的意図に基づく「テロ」と言えるのか疑問があったにもかかわらず、警察や政府筋の情報操作にマスコミは完全に踊らされてしまったのである。

 そして、自ら「犯人」であるとして男性が出頭した現在においても、その男性の供述からは不自然な点や疑問点は多く残っており、その男性は「身代わり」ではないのか、共犯者はいないのか、背後に何らかの組織があるのではないかなど謎は尽きず、何ら事件は解明されていない。

 そのような中で、連日のように、マスコミは、「10人の殺害計画があった」とか「次は元社会保険庁長官を狙っていた」などの被疑者の衝撃的な内容の「供述」を報道を続けている。

 小泉元首相による規制緩和政策の行き着く果ての格差社会化が進み、サブプライムローン問題に端を発したアメリカ経済の破綻と世界恐慌を迎えて、日本社会の中では、非正規雇用者の失業が増加し、不況が一層進んでおり、世の中は暗い雰囲気と失望感で蔓延している。

 そのような状況下で「テロ」が起きたとなれば、政府や警察は、「テロ」の未然防止のためと称して、様々な規制を強化しようとすることは明らかである。今後、このような事件の再発防止を理由として、官僚の自宅の警備を強化したり防犯カメラの設置を進めるとともに、「テロ」を起こしそうな危険人物の洗い出しとその者に対する日常的な監視などが始められるだろう。

 そして、場合によっては、「テロ」の防止のために警察等の権限を強化するための法案が提出されるに至るかもしれない(従来から言われていた「テロ対策基本法」の提出に繋がるおそれがある)

 今回の事件の解明は当然になされるべきであるとしても、今回の事件を「テロ」に結びつけて報道したマスコミの責任は極めて重いと言わなければならない。それとともに、私たちはマスコミ報道に踊らされることなく、今回の事件を冷静に受けとめるとともに、今後の政府や警察による「テロ」対策を理由とする法規制や権限強化の動きを厳しく監視していく必要がある。

【Today's Back Music】
 鬼武みゆき/Eternal Ones(EMR-10003)
  ピアニスト鬼武みゆき(p)、グレッグ・リー(b)、ヤヒロ・トモヒロ(per)のトリオによる3作目のアルバム。最近のライブで新曲として演奏された曲が収録されており、ますます成長の跡が窺える作品となっている。

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