刑事立法

2009.12.03

「取調べの可視化」がなぜできないのか

 民主党は、先の衆院選マニフェスト(政権公約)において、「警察、検察等での被疑者取り調べの全過程についてビデオ録画等による可視化を図り、公正で透明性の高い刑事司法への改革を行います。」と述べ、「取り調べでの自白の強要による冤罪を防止するため、裁判で自白の任意性について争いになった際に検証できるよう、取り調べの全過程を録音・録画することを捜査当局に義務付ける」ことなどを述べていた。
 しかしながら、政権交代後、取調べの可視化は期待した程には進展していない。

 これは、中井洽国家公安委員長が、就任会見以来、「一方的な可視化だけでは済まない」と述べて、おとり捜査や司法取引などの導入を併せて検討していく必要があるとの認識を示し、「捜査当局には(共犯者や余罪の)摘発率を上げる武器を持たさないといけない」などと述べていることと関係がある。まさに、閣内不統一である。

 法務省は、取調可視化について、千葉景子法相と副大臣、政務官の政務三役と刑事局担当者で構成する勉強会を設置した。これに対抗する形で、中井洽・国家公安委員長も、委員会内で議論を始めたほか、警察庁内に勉強会を作ることを表明している。

 そのため、来年の通常国会に、取調べの全過程についての可視化を導入するための刑事訴訟法改正案が提出できる見通しは立っていない。

 監獄法の全面改正により、代用監獄制度は廃止されるどころか、「留置施設」として、その存在は法律上も容認されている。

 そのような中で、相変わらず、被疑者の取調べは密室で行われ、厳しい自白の強要が行われて、任意性のない自白調書が次々と作文され、それを証拠として、次々と有罪判決が言い渡されているのである。

 21世紀になり、これだけテクノロジーが発達した日本においても、いまだに、取調べは、密室において、弁護人の立会が認められることなく、行われ続けている。被疑者は、多くの取調官を前に、圧倒的に強大な権力を前に、孤独な闘いを余儀なくされている。

 23日間という気が遠くなる程の長期間にわたって取調べは続けられる。代用監獄制度の下で24時間監視されたまま、自白が強要され続けられる環境に身を置かれてしまうのである。容疑を認めた者は起訴後に保釈の恩恵を受けられるが、容疑を認めない者に対しては容易に保釈は認めないという「人質司法」も、多少緩和されつつも、相変わらず維持されている。

 まさに、現代における暗黒の闇がそこにある。そして、人知れず、今日も、次から次へと、冤罪の被害者が生まれ続けているのである。

 このような前近代的で野蛮な現状を変えるには、代用監獄制度の廃止と、取調べの全過程の録画・録音(可視化)は不可欠である。国連からも、まさにその点を改革が求められているところである。

 警察や検察が、捜査のためにテクノロジーを使った「科学的捜査」を展開しようとするのであれば、警察や検察が行う取調べについても、テクノロジーを使って、密室での取調べを「可視化」することが絶対に必要であると言わなければならない。

 イギリスを皮切りに、オーストラリアやアメリカの一部の州において、次々と、取調べの録画・録音は広がっている。アジアの中でも、香港や台湾では、取調べの可視化が実現しており、隣国の韓国でも、昨年に刑事訴訟法改正が施行され、取調べの録画が実施されている。

 もはや、日本だけが、いつまでも、密室における自白の強要を許容するような前近代的で野蛮な取調べを温存し続けることは、もはや一刻も許されないのだ。

【Today's Back Music】
 石黒ケイ/YOKOHAMA RAGTIME(VICL-63006)
  石黒ケイの1981年4月ころ発売されたアルバムのりマスター紙ジャケ版。横浜をテーマとした当時としては斬新なオシャレな歌詞と渋い演奏に、当時は何度も聴いていた記憶があるが、実に28年ぶりに聴いたが、それほど色褪せておらず、懐かしいとともに、新鮮な印象も持った。しばらく聴きこんでみたい。

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2009.09.27

民主党政権になり変化が期待されること

 第45回衆議院選挙では、民主党が308議席を獲得し、衆議院の第一党となり、2009年9月16日に召集された特別国会の首班指名で民主党党首の鳩山由紀夫代表が選出されて首相となり、鳩山政権が発足し、選挙による政権交代が実現した。

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2009.07.25

殺人罪等についての公訴時効の廃止に反対する

 公訴時効のあり方をめぐって議論が巻き起こっている。 

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2009.04.29

裁判員制度の制度設計の誤りについて改めて考える

 裁判員裁判を導入する「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(以下「裁判員法」という)は2009年5月21日から施行される予定である【5月21日から施行されている】。

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2008.09.28

裁判員制度の実施をめぐる攻防が始まった

 刑事裁判に、市民から選ばれた裁判員が参加して裁判官と一緒に事実認定及び量刑を行う裁判員制度の創設を定めた「裁判員が参加する刑事裁判に関する法律」(以下「裁判員法」という)は、2009年5月21日に施行されることが決まっている。この日以降に起訴された対象犯罪に適用されることになるので、実際に裁判員が参加する刑事裁判が開かれるのは同年7月以降だと言われている。

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2008.08.26

臨時国会が天王山となる共謀罪法案成立に向けた動き

 共謀罪法案をめぐる動きが、いよいよ現実的になろうとしている。

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2008.07.21

遂に動きはじめた共謀罪法案成立に向けた動向について

 共謀罪法案のことは、世間ではほとんどもう終わったものと認識されていると思われるが、今年の通常国会においても、廃案になったのではなく、継続審議となっている。

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2008.07.16

殺人の公訴時効はなくすべきか?

 毎日新聞が、殺人の公訴時効を維持すべきか否かについて、2008年7月12、13日に全国世論調査をしたところ、殺人事件の時効を維持すべきかどうか聞いたところ、「なくすべきだ」が77%で、「維持すべきだ」の15%を大きく上回ったとの報道がされている(毎日新聞の記事)。

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2008.06.02

被害者に少年審判傍聴を認める少年法改正案の動向

 被害者やその遺族に少年審判の傍聴を認めることなどを内容とする少年法改正案が、2008年5月30日、衆議院法務委員会で、政府案を修正した上で可決された。

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2008.03.26

被疑者取調べ可視化をめぐる動向

 被疑者取調べの録音・録画をめぐって、警察・検察当局で動きが見られた。

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