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2009年7月 7日 (火)

【映画】「愛を読むひと」

映画「愛を読むひと
原題 THE READER
監督 スティーヴン・ダルドリー
製作総指揮 ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン
原作 ベルンハルト・シュリンク
脚本 デヴィッド・ヘア
キャスト ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロスほか
製作国 アメリカ/ドイツ
上映時間 124分
製作年度 2008年

 本作は、ドイツのベルンハルト・シュリンクの「朗読者」の映画化である。

 1958年のドイツが前半の舞台であり、15歳のマイケル(デビッド・クロス)は、21歳年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と恋に落ち、やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになった。ある日、ハンナは突然マイケルの前から姿を消したが、数年後、法学専攻の大学生になったマイケルは、ナチス戦犯を裁く法廷の被告席にいるハンナを見つけ、彼女の法廷を傍聴し続ける。

 ナチスの親衛隊として、収容所の看守をしていたというハンナは、他の看守たちの口裏合わせから、自分が全てを知る立場にあったと認定されて無期刑を言い渡される。
 マイケルは、裁判の途中で、ハンナが文盲であったことに気づき、それが法廷で明らかになれば、ハンナにとっては刑を軽くするのに役立つと考えるが、ハンナがそれを秘密にしていることから、マイケルはそれを言えないままだった。マイケルは、一度、刑務所に面会に行ってそれを助言しようとするが、勇気を出せずに、面会しないまま帰ってきてしまう。

 その後、マイケル(レイフ・ファインズ)は、以前、彼女に朗読した本を朗読して、録音テープを刑務所に差し入れるようになる。ハンナは、刑務所の中の図書館でその本を借りてきて、朗読を聞きながら、言葉を少しずつ勉強するようになり、手紙を書いてマイケルに送ってくるようになる。
 入所して20年後、ハンナに仮釈放が認められるようになり、マイケルは、彼女が住む部屋を借りて受け入れようとする。しかし、出所する日、ハンナは自ら命を絶ってしまうというストーリー。

 ナチス・ドイツにおける戦争下という異常な状況下で、単なる下っぱの看守で、文盲でもあったハンナを裁く法廷シーンについては、色々と考えさせられる。本当に悪いのはそのずっと上司であるはずなのに、下っぱの者が厳しく処罰されることの矛盾や不条理を痛感させられる。そこでは、「正義」とは何かということが常に問い返される。

 マイケルは、15歳の時に出会って恋愛したハンナのことが忘れられず、弁護士になって、結婚もするが、その後離婚して、一人で生活し、他人との人間関係の構築が苦手な生き方をしている。そのマイケルが、本を朗読してテープに録音して、刑務所にいるハンナに送り続ける行為は、無償の愛を体現するようで心を打つ。
 そして、仮釈放されて出所するハンナを待ち続けていたのに、結局、ハンナは自ら命を絶ってしまい、永久の別れをすることになってしまう。

 本作は、ユダヤ人を虐殺したドイツ人の責任のとり方に対する一つの問題提起をするものだと考えられる。

 私は数年前に、アウシュビッツ収容所跡を見学した。大量のユダヤ人を虐殺したことは、決して現場の下っ端がやっていたことではなく、国家的なレベルで上からの指示に基づいてなされていたにもかかわらず、上の方の幹部は証拠を隠滅して責任から逃れようとしたと言われている。
 アウシュビッツ収容所跡を見ると、極限状態に置かれた人間が、一体どこまで残酷になれるのか、ということをまざまざと思い知らされる。ドイツと同盟関係にあった日本にもその責任が全くないとは言えないはずであり、日本人であれば、是非、アウシュビッツ収容所跡を見る義務があると思う(唯一の日本人ガイドの中谷剛「アウシュヴィッツ博物館案内」凱風社はお勧めである)
 ちなみに、本作でも、大学生のマイケルが、アウシュビッツ収容所跡を見に行っていると思われるシーンが登場する。

 原作にはないようだが、映画の最後に、マイケルが、自分の一人娘を誘って、ハンナの墓の前に行き、自分とハンナとの関係について語り始めるシーンがある。 歴史が語り継がれることによって次の時代が作られること、そして同じ過ちを犯さないことが重要であることを示唆しているようである。

 本作は、見終わった後に、深く考えさせられる映画である。

<同感であると考える映画評>
 佐藤秀の徒然幻視録「愛を読むひと

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コメント

TB有難うございました。私は、これを2種類の社会的弱者の悲劇的対決と見ました。

投稿: 佐藤秀 | 2009年7月 8日 (水) 07時52分

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