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2009年7月 7日 (火)

【書籍】長谷川幸洋「日本国の正体」

長谷川幸洋「日本国の正体

発行年月 2009年06月
発売元 講談社
ISBN 9784062950503

 中日新聞社の現論説委員が、これまで政府関係の審議会などに委員として出席したり、経済記者として取材をした経験から、日本を本当に動かしているのは政治家ではなく、官僚であり、重要な政策や法案は、全て官僚たちが自ら決定して、それを与党の政治家によって実現しているに過ぎないという「官僚内閣制」とでも言うべき実態を赤裸々に描いている。

 「三権分立」の建前から、メディアで働いている記者ですら、政策決定は政治家で行っていると誤解しているが、実際には、全て、官僚が決めており、政治家はその政策や法案を実現しているだけであると断言している。

 この本で、筆者は、経済政策を例にして、財務省が、いずれ増税を実現するという立場に立って、それに反対する動きをことごとく潰してきたと考えられることを指摘しているが(中川・前財務大臣の辞任問題、高橋洋一氏の逮捕)、非常に説得力がある。

 また、官僚たちは、入省時には誰でも理想を持っているが、やがて先輩の天下り先を確保することに汲々とするようになるという官僚体制の限界を明らかにしている。

 この本を読んで、まさに目から鱗が落ちる位、インパクトがあった。以前から、漠然として、日本は官僚が膨大な力や利権を持っているとは思っていたが、政策決定や法案作成のほとんどを官僚だけで決定し作成しているとの指摘は衝撃的ですらある。

 これを読むと、これは経済政策に限る話ではなく、刑事政策などの面でも、全く同様に、官僚が全て政策決定や法案の作成をしていると考えられるのであって、「議員内閣制」は完全に形骸化しており、国会が「国権の最高機関」であるということも形骸化していると言える。

 最近では、国会の審議が、形式化・セレモニー化しており、官僚が作成した法案に「お墨付き」を与えるだけの機関に成り下がっている。それは、参議院で野党が多数を占めて、いわゆる「ねじれ国会」になっても、本質的には変わっていない。

 これが、今度の衆議院選挙によって、仮に民主党が政権をとったとしても、官僚主義に根本的なメスを入れた改革をしないと、現在と大きく構造は変わらない恐れがある。

 その意味で、一体、今の日本の政策を決定しているのが誰なのか、国民の選挙を経た訳でもない官僚が、「国権の最高機関」を差し置いて政策決定していることは、三権分立に反するだけでなく、民主主義にも相容れないと言わなければならない。

 筆者は、「記者クラブ」が、この官僚による政策決定をそのまま報道してくれる「補完勢力」になっているとも批判している。記者クラブについては兼ねてから批判が多いが、マスコミ自身のあり方も大きく変える必要がある。

 本書は、改めて、表舞台から見えにくい官僚たちが、今の日本を動かしていることを白日の下に晒した書であり(同じ筆者には、まだ読んでいないが、『官僚との死闘700日間』講談社がある)、私たち市民にとって必読だと思う。

 日本に根付き、今の日本を左右する大きな存在となった官僚制度について、根本的な改革が求められている。

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